〜てつわんアトム 第6話〜 小梅の物語

小梅の物語 第6話

トス！
アターック！
そっちボールいったよ！
いちっにのっさーん！

そーれ
そーれ

家には二つ違いのちびっこ。小2と小4。
あとは無口な夫。

長女キナこの塾がはじまった年だった。
塾と自宅の送り迎えの日々がはじまり、1分で寝る技を身につけた。
体はクタクタ

ふとんください
まくらはなくていい
平べったいとこならどこでもいいです、もはや

去年はサナこの友達にいじめっ子がいて、撃退すべく転校したのだ
そう遠く離れてはないが家の引っ越しもして、心機一転

あーだこーだしてたら今度は上の子が中学受験

母の香穂子がとんでもない学歴コンプレックスだから、無意識のうちに自分の子供も偏差値の高いところにいれようとしていた
それ以外の選択肢はありえなかった
公立の中学？
いやいやないっしょ
ないない

父に相談するも、否定したらヤバイことをしっているのでもちろん賛同

自分が大学に入ったとき
あの時の悔しさを子供に味わわせたくない
なにより自分も二度と味わいたくない
今思い出しても腹が立つ

岩手の田舎から上京し、日本一女子大にいった
その翌年、ひとつ上の兄が浪人して一番大学に合格したのだ。偏差値67！国公立！

するとどうしたもんか
香穂子の手のひらが見事なまでにひっくり返り
兄へのチヤホヤが最上級
自分への扱いが天と地の差

なんじゃこりゃ
びびるわ
あっけ

こんな人実際いるの？
漫画の世界だけやないのかい
自分の学歴コンプレックスのくせに
痛みがわかるはずなのに

なにより、あんた、それで母親かよ

あのときの怒りを跳ね返すかのように
子供以上に勉強をして、そらで全国の名産物を言えるようになった

らっかせい！
茨城！

じゃがいも！
北海道！

ストレス発散はバレーボールだった
小梅と同じくバレーに打ち込むママがいて、その必死っぷりが我ながら恐ろしかった

「奥歯かけるくらいまでやらないと」
「自分はまだまだ！」

髪の毛もバッサリとショートカット
オリンピック選手でもないのに気合だけはプロ並み
何かに取り憑かれていたのだろう

ほかにはカラオケ
毎週のように子供達とカラオケにいった
家から三台の自転車をとばし、駅前にあるカラオケでひたすら歌った

いらないなにもー捨ててしまおう♪
君を探しーさまーようーまいそー！
ストッザタイーシャリラーッ
がーまんできなーい
ぼくをーをぜんぶあげよおおおおおおおお！！

幸せな友達にはあいたくない症候群
そんな話ききたくないの

子供のことを学校の先生に相談していたら、気が緩み、なびいてしまいそうになった
そしたら何故かそれが夫にバレ大騒動
まさかの探偵までつけられてやばみだった

これが隠れ離婚のはじまりだった
子供達には離婚したことをいってない
いえないっしょ
大人になるまでは

でも実際は離婚しとるわ
顔合わすのツラ
地獄かい
喧嘩もしたくないわ話したくもない
でもイライラは止まらず

誰にも相談できない
わかってくれる人、いやしない

つづく

空をこえて ラララ 星のかなた
ゆくぞ アトム ジェットの限り
心やさし ラララ 科学の子
十万馬力だ 鉄腕アトム

耳をすませ ラララ 目をみはれ
そうだ アトム 油断するな
心ただし ラララ 科学の子

七つの威力さ 鉄腕アトム

町角に ラララ 海のそこに
今日も アトム 人間まもって
心はずむ ラララ 科学の子
みんなの友だち 鉄腕アトム

空をこえて ラララ 星のかなた
ゆくぞ アトム ジェットの限り
心やさし ラララ 科学の子
十万馬力だ 鉄腕アトム